昼のあいだ、
展示はすべて眠っています。
当館が扉を開くのは、街が寝静まった後。
案内灯はありません。あなたの手元の小さな灯りだけが、
九つの蒐集を闇から呼び覚まします。
明治期の蒐集。硝子の眼は当時の職人の手吹きで、夜の眼は閉じることを知らない。
月の光にだけ翅を開くといわれる蛾たち。針の上で、いまも夜を待っている。
闇の中でだけ、内側から光る石。昼に浴びた紫外の記憶を、夜になって手放す。
断面の縞模様は、宇宙空間で一億年かけて冷えた証。手のひらより重い、星のかけら。
文字を持たない空の地図。獣と狩人の姿だけで、夜空のすべてが記されている。
深海八〇〇米より引き揚げられた個体。誘引灯は、いまも微かに光ることがあるという。
七千万年の眠りのあいだに、殻は虹に変わった。海の記憶がいちばん美しくなった姿。
月齢を告げる針は、今夜も正確に狂い続ける。この館の閉館時刻だけは、なぜか外さない。
ぜんまいを最後まで巻けば、夜明けまで歌い続けるという。試した者は、まだいない。
見つけられなかった展示は、あなたが帰ったあと、
そっと場所を変えるといいます。
お礼に、館の灯りをすべて点けました。
どうぞ、明るくなった館内をもう一度ごゆっくり。